京都府伊根町は、海にせり出すように建てられた約230軒の舟屋が独特の景観をつくり出す町として知られています。SNS映えスポットとしても人気を集め、2023年には年間48万人以上が訪れるほどの観光地となりました 。
しかし、その急増する観光客が町に賑わいをもたらす一方で、住民からは「週末は出たくない」「観光客はひたすら迷惑」といった切実な声があがっています 。美しい景観の裏で、伊根の舟屋は深刻な“オーバーツーリズム”問題に直面しているのです。
「伊根の舟屋」に来る観光客は迷惑?起きている現状
急増する観光客と交通渋滞

出典:中日新聞
伊根町には鉄道が通っておらず、観光客の多くは車で訪れます。そのため週末や観光シーズンにはアクセス道路が大渋滞。町は3カ所に合計約100台分の無料駐車場を整備していますが、満車になることも多く、平日でも交通誘導員が必要な状況です 。漁村の細い道路には普段見かけないほどの車列ができ、住民が日常生活で車を出すのも困難になるほどです。
観光マナー違反の実態

出典:dメニューニュース

出典:FNNプライムオンライン
交通混雑以上に深刻なのが観光客のマナー違反です。舟屋は住民が今も生活している家屋であり、観光施設ではありません。ところが実際には、
- 「立入禁止」と明記された敷地に無断で入って撮影する観光客
- 個人宅のトイレを勝手に利用するケース
- 敷地前の海で泳ぐなどの危険行為
- ゴミのポイ捨てや生活空間での飲食
といった行為が相次いでいます。住民にとっては生活を侵害される迷惑行為そのものであり、「観光地化」の弊害が露わになっています。
地元住民や商店主の声

出典:カンテレ
「観光客はひたすら迷惑!」
舟屋に暮らす女性は「観光客はひたすら迷惑」と強い言葉で語り、無断で敷地に侵入されるたびに不快感を募らせています 。週末には人と車でごった返す状況に「出かける気にもならない」と話し、町の雰囲気が一変したことを嘆いています。
商売人も複雑な心境
観光客のおかげで売上が上がる一方で、「もういい」「観光客はいらない」という声も地元商店から聞かれます 。産業が限られる町だからこそ観光業に頼らざるを得ないが、その観光が暮らしを壊しているという皮肉な現実に、地元は苦悩しています 。
自治体・DMOと観光協会の具体的対策
パーク&ライドで緩和へ
- 「海の京都DMO」が、土日祝を中心に日出で車を停め、シャトル又は船へ乗り換える仕組みを導入し、交通と住民負担の軽減を図っています。
- さらに2025年の夏季には、「伊根航路」「ぷらっと丹後半島観光バス」「伊根パーク&クルーズ」など移動ルートの多様化を図る実証運行も開始。
専門家からの提言
- 京都大学の藤井聡教授は、通行料金・駐車料金の引上げ、入場料制度の導入、駐車施設への再投資を提案し、「住民生活優先」の原則を訴えています。
- また、上高地や白川郷といった地域では、マイカー規制やシャトルバス導入により混雑が改善された成功事例も紹介されています
観光客に求められるマナー
基本ルールを守ることが第一歩
- 私有地に入らない:舟屋や庭先は観光施設ではなく住民の生活空間。
- ゴミは持ち帰る:町内にはゴミ箱が少ないため、ポイ捨ては絶対にしない。
- 公共施設を利用:トイレや駐車場は指定のものを利用する。
- 交通ルールを守る:違法駐車を避け、狭い路地では住民優先。
- 静粛な態度を保つ:夜間や早朝は特に配慮を忘れず、静かに過ごす。
こうした基本的なマナーを守ることが、伊根の舟屋の魅力を未来に残すために欠かせません。
持続可能な観光のために

出典:楽天トラベル
伊根町は観光業で町の経済を支えながらも、住民の暮らしを守るという難題に直面しています。観光客の「ほんの少しの思いやり」が、地域の未来を大きく左右します。舟屋を訪れる際には“住民の生活の中にお邪魔している”という意識を忘れず、マナーを守る行動を心がけることが求められています。
美しい景観と人々の生活が共存する伊根の舟屋。この貴重な文化景観を守り続けるために、観光客自身が「迷惑をかけない観光」の実践者となることが必要なのです。



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